日本語ー生成原理の解明

大和言葉はこうしてできた

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8. 日本語生成原理―母音変化を伴う膠着を繰り返す

大和言葉は母音変化を伴う膠着を二度、三度と繰り返すことによって生成されたものである。これが日本語生成の原理です。

   1音節語→2音節語→3音節語→4音節語→

ツク→ツカム、ツカム→ツカマルのように2音節→3音節、3音節→4音節間の変化についてはこれまでよく知られてきました。それが日本語における一般的な語形変化です。とすると1音節語→2音節語の間にも同様の変化があるというのが自然です。ただ1音節→2音節におけるプロセスではヌ→ナグ、ツ→タスのように語の外見の変化が大きく案外気づきにくいのです。

大和言葉の原初は1音節動詞です。この1音節動詞というのは、スーッと動くのスとか、ヌルヌル・ネバネバのヌのように本来的には動作を表す擬態語と言ってよいものです。大和言葉はこういう単純な音を起源にし、多様な枝分かれや組み合わせの結果として生み出されていると考えられるのです。

本稿[3]で、母音の機能を説明しました。日本語は母音が語生成の機能を持つ言語なのでした。
その機能というのは、これまで2音節語や3音節語に対して考えられていたものでした。じつはその母音の機能論が、単音節語に対しても働いている。原初的な単音節語を機能性母音を媒介として組み合わせてできたのが、日本語なのです。

原初の単音節語というと、k,s,t,n,p,m,y,r,wという10個ほどもありません。これが、1音1義というわけではありませんが、じつは1音に2義くらいなのです。1音1~2義で多様な数千という日本語が生み出されるというのは信じがたいことかもしれません。

実際、具体的にどのように多様なコトバが形成されるのか、その一端を次項のビデオ解説でn行を例に説明します。また書籍・資料のページにs音の説明を入れているのでご覧下さい。

ただ、多くの人に次のような先入観があるようです。

●日本語の数千という語彙が、十個たらずの原初的な語(意味を与えられた音)から形成されるはずがない。
●ソシュールによる言語の恣意性ということが現代言語学の出発点であり、音と意味に一義的な関連を認める議論は認められない。

事実を究明するより難儀なことはこのような固定観念に対することです。拙著『大和言葉の作り方』(渡部正路・叢文社)では、このような観念にどのように対抗するかを意識し、語構造論(2音節語、3音節語ともより簡単な要素に分解可能である)から出発しています。ぜひご検討ください。

(本項終わり―本論は『大和言葉の作り方』の要約です)


[1]単純な語から多様な語が生み出される
[2]単純な語から多様な語が生み出される―2
[3]ヤマトコトバは膠着語である
[4]ヤマトコトバは膠着語である(例)
[5]膠着語尾を取って始原形を推定する
[6]トル・テ (取る・手)
[7]すーっ(と動く)の「ス」
[8]日本語生成原理―母音変化を伴う膠着を繰り返す

日本語の起源