中国語ーその音的起源

4.中国語と日本語の比較

中国語の「音=意味」の関係は日本語と類似する

日本語音の意味と中国語を比較すると下表のようになる。下表で「日本語」欄に書いたものは『大和言葉の作り方』に示した分類である。
意味的に類似性がある音…n、k、t、ts(日本語ではs)
意味的に類似性がない音…m、p
h・ng・l、w・yについては、音自体が相手側言語にない。
日本語との類似性の高いS音・T音・K音についての『大和言葉の作り方』の参考資料はこちら

  中国語 日本語
①柔らかい、しなやかな ①流動・伸展 ②声・音

①囲う・くむる・カバーする②殻・固い殻
③カーブする④凹む⑥間隔⑦高い、広い

①下る②くるむ③繰る④来る⑤重なる、上
①叩く②平ら③止まる・集まる④突き通る ①付着(付く、突く)②連続(継ぐ)③集積(集まる、積む)
ts ①窄む縮む②小さい③ぎざぎざ④集まる  
  ①吸う(収縮・集結・密度濃い)
②進む(進行・下降)
①小さい・細い ③隙間を通す
①覆い隠す、隠れて見えない②生む 一処で動く(ムズムズ、ゴソゴソ)、間(マ)、
回る、ム(身)、ムス(生)
①ペタン②ポキ③プッ ①吹く(覆う、被せる、膨れる、吹く)
②振る(振り払う、開ける、端、間、渡る)
①大きく広がる  
ng ①ガヤガヤ、ゴツゴツ  
l ①するっと、スーッと、累々と②スースー  
w   ①分く(脇、曲わだ、渡る、彫る、緒、男)
y   ①行く(湯、移る、遣る)②揺る、淀

日本語のK音は、語彙数が多く、じつを言うと一番意味的なまとまりを見つけにくい音である。
クダルのように「下」の意味を作る一方、カミ(上)、カカグ(掲)、カサヌ(重)のように「上」の意になったりする。固いや渇くのように、他の語との間に類似を見つけにくい語もあるのだが、中国語のK音にも「固(コ)」「渇(カツ)」などが含まれることは興味ぶかい。

なお、藤堂明保氏の漢字分類についてであるが、すべて正しいということはなく、いくつかの誤りは含むものと思われる。例えば、「裏(LEK)」の基本義を「すじ」とし、裏地にスジのある布地を用いたためとしているが、裏布がいつもスジ目の布地とは限らず、かつ裏のような語は衣服の発生より古いと考えなければならない。

日本語のウラ(裏)、ウシロ(後)のウについては、「ウ=連続、(本体から)続く」だと『大和言葉の作り方』で説明した。その立場から言えば、中国語においてはL音が連続を表しているように思われる。

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音と意味の関係の類似性と起源の同一性は、直接には結びつかない。しかし、中国語も日本語も単音に特別な意味を与え、それを元に語を作るという点では類似の言語であり、ともにユーラシア大陸に存在した単音節文化圏に属するとはいえるであろう。

 

 

日本語の起源